クルド人難民Mさんを支援する会 ブログ

日本で難民申請をしているクルド人の難民、Mさんを支援する会のブログです。支援の状況をタイムリーにお知らせします。 支援会本サイトはhttp://chechennews.org/msan/です。

ご報告 講演会「果てしなき入管収容所からの解放を求めて- 国際的人権の視点より -」

講演会「果てしなき入管収容所からの解放を求めて- 国際的人権の視点より -」には、100人以上の方にお集まり頂き、大盛況となりました。参加された皆様、誠にありがとうございました。

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会場は満席で、大盛況となりました。

【第一部】
「人権とは何か -世界から見た日本の状況-」  藤田早苗さん (英国エセックス大学ヒューマンライツセンターフェロー )からは、木を見て森を見ないという言葉がありますが、森も見ながら木々を見るということで、「国際人権 」の中での「入管問題」というテーマでお話いただきました。

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   藤田早苗さん (英国エセックス大学ヒューマンライツセンターフェロー )

 

人権とは

まず、人権とはどういうものか。「思いやり」=「人権」ではない。日本ではここがよく間違われる。「思いやり」は誰かが誰かに与えるもので、与える人が与えるかどうかを決める。「人権」は 全ての人が生まれながらにもっている権利である。
ドイツにおけるユダヤ人の虐殺など、第二次世界大戦中の著しい人権侵害に対する反省から、人権 は国内事項ではなく、国際関心事になった。

 

国連の人権機関
国連の人権機関には、
1.条約機関(Treaty Bodies) 例:自由権規約委員会、女子差別撤廃委員会など
2.人権理事会(Human Rights Councill)
があり、条約機関では独立専門家による委員が、加盟国の条約実施状況を監視したり、政府報告書 の審査をし、勧告を行っている。
また、個人通報制度(Individual complaint mechanism)という制度もあり、人権侵害を受けた個人 が、国内の終審判決に不服が残る場合、人権条約機関に直接訴え、救済を求められる。つまり最高裁で負けてしまった場合でも、その後が国連に用意されている。
しかし、この制度を使うには、その条約の「選択議定書」を批准する必要がある。
地域人権機構(例えば欧州人権裁判所など)を入れると、先進国でこの制度が使えないのは日本だけである。

 

難民問題に関する勧告
自由権規約委員会・日本報告書審査(2014年)によって、
・ガーナ人男性が強制送還中に死亡した事例への懸念
・ノンルフールマン原則(難民を迫害が予想されるような地域に追いやってはならないという国際法上の原則)が効果的に実施されていない
・難民不認定処分に対する停止的効果を持つ独立した不服申し立ての仕組みがないこと
・十分な理由を示すことなく、また収容の是非を決定する独立した審査もない中での長期にわたる行政収容があることなどが指摘されている。

このように、国連からは皆さんの活動にかかわるような勧告が出ている。また、普遍的定期的審査(UPR)といって、約4年に一度、国連加盟国193カ国すべての人権状況が審査される機会がある。
日本は2017年11月に最新の審査を受けている。
ちなみに日本が受けた勧告のトップ3は、死刑廃止、国内人権機関の設立、個人通報制度の3つ。2017年のUPRでは、それまで入っていた「難民受け入れ」が入っていなかった。
このように国連の勧告は出された後もアップデートされていく。勧告を受けた政府からの答弁も公開されるので、皆さんもぜひ活動に使えるツールとして、活用していって欲しい。

 

マクリーン事件判決について
「判決:基本的人権の保障は、性質上日本国民のみを対象と解されるものを除き、日本に在留する外国人にも等しく及ぶ。しかしあくまで、「在留制度の枠内で与えられたもの」にすぎない。
また更新するかしないかは『法務大臣の裁量』である。」とされている。
しかし国際的な人権の視点から見ると、法務大臣の裁量によって変わる人権の保障は、国際スタンダードからはほど遠い。
このような時、もし個人通報制度が使えたなら、国連に判断を仰ぐことができる。

 

日弁連のイギリス視察(2014年)
日本の収容問題の中心的存在である児玉晃一弁護士一行が、イギリスの入管を視察に訪れた。藤田さん自身も同行した。

弁護団が収容者の保釈に関する裁判傍聴をした際、収容者のためにティッシュや水が置いてあった。そして「足に電子タグを付け、週2回出頭することを条件に保釈する」という判決が出た。
収容者への配慮とスピーディーな判決。

移民難民裁判所のフィリップ判事とのインタビューにおいて、判事は「個人の自由は非常に大事なもので、罪を犯していない人を収容することは、極めて例外的な場合のみ許容される。そして、当然ながら、独立した司法府に対して不服申し立てができる制度でなければならない。もし政府が対外的なコントロールを受けることもなく(無制限に)収容できるとすれば、それを非民主的な国家であると考える」と、マグナカルタを引用しながら語った。
イギリスでは「身体の自由が原則」であり、原則として収容しない。

日本の入管とのあまりの違いに 皆、驚き、「ハマースミスの誓い」という入管制度を変えるために活動する弁護士グループ設立のきっかけとなった。

 

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移民難民裁判所のフィリップ判事のインタビュー 「個人の自由は非常に大事なもので、罪を犯していない人を収容することは極めて例外的な場合のみ許容される」

BBC放送「外国人実習生問題」
イギリスのBBCが制作した日本の外国人実習生問題を特集した番組のダイジェストが上映されました。

少子高齢化を迎えた日本社会は、労働力不足を外国人労働者によって補っている。技能実習生制度もその一つで、途上国への技術移転を建前としながら、実際には安価な労働力として搾取している。同質性を求める日本社会では、労働力を外国人に依存しながらも、異質な存在として見ている。
実習先の日本人男性たちから、毎日のようにわいせつなからかいを受け続けた中国人の女性。「ばか」とふざけて言い返したら、雇用主が猛烈に怒り出し「お前は黙って馬鹿にされていればいいんだ!」と言われた。職場で女性は自分一人だった。あまりに辛くて実習先から逃げ出した。今はシェルターで暮らしているが、笑って話していても突然泣きたくなったり、死にたいと思うことがある。日本に来なければ、こんなことにはならなかった、と女性は涙を流しながら語った。


日本の外国人に対する蔑視を端的に捉えた番組でした。

人権感覚が失われ、監視の目や制度を改善させる仕組みが存在しないと、平和と言われる日本であってもこのような人権侵害が平然と行われるのだと分かりました。

入管問題も同様で、誰をいつ収容するか、いつまで収容するかは全て入管の裁量によって決められます。また入管収容所の中にはカメラやビデオなどを持ち込むことができないため、職員から暴行や暴言、不当な扱いを受けたとしても、それを証拠として記録することができません。監視の目と第三者機関の不在。それが入管で人権侵害が横行する原因となっているのだと実感しました。
藤田さんのお話は大変示唆に富み、今後の活動の道しるべとなるようなお話の数々でした。

 

【第二部】
 トルコ・クルド人居住地域取材報告
「トルコにおけるクルド人への抑圧とは -国なき民族の今-」
 中島 由佳利さん (ノンフィクションライター)

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中島由佳利さん(ノンフィクションライター)



中島さんからはクルド民族の歴史の説明のあと、トルコ現地のクルド人の方から聞き取ったトルコ政府による様々な迫害を中島さんが代読されました。
家に突然トルコの軍隊がやってきて父親に暴行を加えたこと、身動きができなくなるまで痛めつけた父親に排泄物を浴びせかけ去っていったこと、苦労して石だらけの荒れた土地を開墾しても、トルコ人ならすぐに土地の登記できるのに、クルド人はなかなか土地の登記をさせてもらえず、いつまでも自分の土地にできないこと、市場で「物価が高すぎる!」と言っただけで警察に逮捕された女性、SNSで体制批判をしただけで刑務所で無期限に拘束されている男性、日本で長期間収容されることに耐えられず、トルコに帰国したが治安部隊(ジャンダルマ)が捜索しているため、故郷に帰れず都市で暮らしている人など。
生々しい証言の数々に、参加者の方々は息を呑んで聞き入っていました。

 

【第三部】
「長期収容とハンガーストライキ、そして再収容 恣意的拘禁の問題点 」
 大橋 毅さん (弁護士・クルド難民弁護団

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大橋 毅さん (弁護士・クルド難民弁護団



大橋弁護士からは、まず基礎知識として難民申請をした人がなぜ入管に長期収容されてしまうのか、ということを分かりやすく解説して頂きました。
また、法務省のHPに掲載されている資料を元に、以前は収容されても8~9ヶ月ほどすれば仮放免が 認められていたが、ここ2年間はよっぽど重い病気にならない限りは全く仮放免を認められなくな ってしまったこと、その結果、長期収容が格段に増えていること、終わりの見えない収容に収容者が精神的に疲弊してしまい収容者に処方される薬品費や医療費が2017年度は2億4千4百万円にも達していること、向精神薬が処方されている可能性があること、精神的なストレスから収容所内でのトラブルも格段に増えており「保護房」と呼ばれる隔離部屋に連れて行かれる件数や、職員が制圧行為を行う制止件数も著しく増えていることを説明して頂きました。

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長期収容の国際人権法上の問題点として、下記のようなご報告いただきました。

入管収容の最長期限を設けることを国際機関が日本に勧告している。
・国連の人種差別撤廃委員会(条約機関)「日本の第10・11回定期報告に関する総括所見」(2018.8.30)35項、36項では、
難民認定率が非常に低いことを懸念する。」
「期間を定めない庇護希望者の収容を懸念する。」
「全ての難民認定申請者が適正な配慮を受けるよう確保することを勧告する。」
  「収容所の収容期間の上限を導入することを勧告し、庇護希望者の収容が最後の手段としてのみ、かつ可能な限り最短の期間で用いられるべきであり、収容以外の代替措置を優先するよう努力すべき」
という勧告を出している。


国際人権法に対する日本政府の態度
(1)条約機関から出された一般的意見を裁判などで引用し、法務省に見解を聞くが、
法務省としは「勧告には 法的拘束力はない」との主張が多数となっている。
   仮にも自らが批准している条約の機関から勧告について、このような態度を取ることは
   モラルハザードではないかと主輪得る。

(2)政府報告書審査
  ア 成功例:難民事業本部の難民申請者一般への生活支援、収容所等視察委員会、

子どもの収容については、一定の効果が見られたと思われる。
  イ すれ違い
  ・拷問等禁止委員会「第1回定期報告書審査の最終見解」(2007年8月7日)14項におおいて、「入管収容センターにおける不当な取扱として認められた事案が今日まで1件のみであることを懸念する」と指摘された点について、
法務省は、日本には平和憲法があるからこういった事案は1件しか出ていないのです、と胸を張って言ったという。拷問等禁止委員会は、不当な取り扱いを申告する制度が導入されて10年以上も経つのに、たった1件しか認められていないことに懸念を表明しているのにも関わらず、その意図が法務省には伝わっていないと感じる。

  ウ ごまかし
    2019年9月発表の「人種差別撤廃委員会の総括所見に対する日本政府コメント」では、「退去が決定した後に難民申請をした場合は,収容の上、難民認定手続を進めることになるが,送還は停止され,特に人道上の配慮が必要な者については,仮放免を弾力的に運用することで最大限配慮している」としている。明らかに今の入管収容の実態とかけ離れており、事実にそぐわない報告をしている。


(3)条約上の個人通報制度
批准していない。

 

(4)UNHCRの日本事務所によるマンデイト難民
   個人通報制度に似た制度がかつてはあった。それは国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)が認定するマンデイト難民という制度である。日本政府が難民と認定しなかった人についても、国連の難民の基準を満たしている人については、国連が認めるマンデイト難民として認定していた。しかしそういった人々でさえも、日本政府は難民として保護することをせず、マンデイト難民が日本にどんどん滞留してしまった。そして最終的にはマンデイト難民の一人をトルコに強制送還してしまった。
日本政府との対立を避けるため、以来、日本においてはUNHCRはマンデイト難民の認定をやめてしまった。

参考: NPO法人難民支援協会「クルド難民強制送還事件:国、国連、市民はどう動いたのか
     難民支援協会ホームページ内
     キーワード「クルド難民強制送還」で検索
                            
在日クルド人からのアピール
クルドを知る会松澤さんから、現在収容されているクルド人、メメット・オズチャルギルさんと家族の窮状についての訴えがありました。オズチャルギルさんの娘さんは、幼い頃にトルコの治安部隊が家に突然やってきた時に屋根に逃れ、誤って屋根から落下してしまい脳に障がいを負っています。父親が収容されてしまったことで精神的に不安定になっており、夜中に大声を出して暴れてしまうことがあるそうです。また、食事や排泄など娘さんの身の回りのお世話ををしている母親も、一人で介助をすることに疲れ果てており、心身ともに限界に来ているとのことでした。会場では署名の呼びかけもされ、多くの方が署名にご協力下さいました。
また、会場に来ている何人かのクルド人方の状況や日本に来た経緯などをご紹介頂き、4人ほどのクルドの方からお話を伺いました。
クルド人難民Mさんを支援する会からは、Mさんの来日経緯を紹介。Mさん自身からも、入管に収容された時の経験として、医療体制の不備を話していただいました。仮放免された後の、健康保険もなければ就労資格もないこと。、私は日本に難民として保護して欲しいとお願いしただけなのに、働いたことを理由に、まるで犯罪者のように扱われ収容されることは間違っている、とお話し頂きました。

 

支援者アピール
支援関係のイベントのご紹介をさせて頂きました。
来春公開されるジャーナリスト堀潤さんの映画「わたしは分断を許さない」では、在日クルド難民や、入管の長期収容問題が取り上げられていることや、1月から2月にかけて、京都の立命館大学国債へ和ミュージアムでパネル・写真展「わたしをここから出して」を開催すること、2月9日には大阪でRAFIQという難民支援団体とともにトークイベントを開催することなどをご紹介しました。


最後に、難民と収容についての総合情報サイト「RDTO.org東京オリンピックのために収容される難民たち」をアーティストのバーバラさんからご紹介して頂きました。紹介チラシとオリジナルステッカーを配布し、携帯やパソコンに貼って、ご活用下さいとご案内しました。

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情報サイトRDTO.orgの紹介

人権とクルド人、入管問題についての理解が深まり、多くの方にご参加頂けました。活気溢れる非常に良い会となりました。
今後とも、私たちクルド支援三団体は積極的に発信をしてゆきます。どうぞ引き続きご注目頂ければと思います。

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講師の皆様、ありがとうございました!