クルド人難民Mさんを支援する会 ブログ

日本で難民申請をしているクルド人の難民、Mさんを支援する会のブログです。支援の状況をタイムリーにお知らせします。 支援会本サイトはhttp://chechennews.org/msan/です。

劇団民藝『巨匠』。心震える舞台をぜひ!

劇団民藝さんの舞台『巨匠』。新宿の紀伊國屋サザンシアターで12月17日まで絶賛上演中です。初日に拝見しましたので、遅ればせながら、感想を書かせて頂きます(ネタバレを含みます)。
「これから知識人を4人殺す」
ナチスの将校はそういって、ポーランドの廃校に避難していた人々の中から「知識人」とそうでない人を選り分けていきます。
その中の一人の老人は長年、俳優になることを夢見、いつか舞台に立つことを信じてハムレットマクベスの役を温めていました。ちょうど居合わせた若い俳優志望の青年に、俳優とはいかなるものかを熱をもって語っていたところでした。青年は老人の言葉にすっかり魅せられ、もっと知りたいと思うようになります。
そこにやってきたナチスの兵士たち。将校は老人の身分証明書を見て「あなたは俳優ではなく、劇団の簿記係だ。だから知識人ではない」と言って銃殺の対象から外そうとします。しかし老人は「私は俳優です!」と食い下がり、それを証明するために、将校の促すまま「マクベス」の一場面を演じ始めます。
人は危機的状況において積極的な自己主張ができるのか。
いまを生きる私たちにとっての「危機的状況」とは――。
俳優であることを証明すれば、その先には銃殺が待っているにもかかわらず、老人はためらうことなく、自分のマクベスを演じます。
老人にとって、自分が俳優ではないと自ら認めることは自分の人生を裏切ることになり、銃殺されるよりも恐ろしいことなのだと感じました。
老人は他の知識人と共に命を奪われました。
老人が語った、演劇とはこういうものなんだ、俳優とはこういうものなんだ、という、高い職業倫理に基づいた言葉。
それは、若い俳優志望の青年の心に深く刻み付けられ、20年の時を経て、マクベスの初舞台を踏む青年に葛藤を投げかけます。
青年の葛藤を、最初は理解できなかった演出家A。観客が期待する通りのあのマクベスを演じればいいじゃないか。そうすればあんたへの評価は確実なんだから、と。しかし、青年がかつて目にしたものを語った時、Aは叫びます。「やって下さい!あんたのやりたいように!」
その言葉が私たちへのメッセージなのだと感じました。
「虚構を使って本質を突く芸術、演劇」、演出家Aを演じた齊藤尊史さんの言葉です。
演劇はフィクションではあるのですが、私たちの現実社会を映す芸術なのです。
今、私たちの社会では何が起きているのか?「防衛費」という名の軍事費は過去最高額となっています。政府は憲法を変えることに意欲的です。100年前に関東大震災を機に起きた虐殺事件は無かったものにされようとしています。しかし、選挙への関心は低く、選挙権があっても、半数の人が選挙に行きません。
この先には何があるのか?
これは舞台から発せられた私たちへの警告なのです。
劇団民藝の皆さんの並々ならぬメッセージを受け取った思いです。
ちなみに劇団民藝さんの次回作は、何と中島京子先生の名作小説『やさしい猫』です!『巨匠』で出演された役者の皆さんが何人も出演されます。
劇団の皆さんの熱い魂を感じ、いやがおうにも私の公演に対する期待は高まってしまうのです。
『巨匠』―ジスワフ・スコヴロンスキ作「巨匠」に拠る―
作=木下順二 演出=丹野郁弓
2023年12月8日(金)~17日(日)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

https://www.gekidanmingei.co.jp/performance/2023_kyoshou/

↓お申込みはこちらまで!
TEL.044-987-7711 へ
「齊藤尊史(さいとうたかし)さん扱いで」と予約の際にお伝え頂くと、ちょっと良いことあるそうです。


【12月19日から予約開始!】
2024年劇団民藝公演『やさしい猫』
原作=中島京子著「やさしい猫」(中央公論新社刊)
脚本=小池倫代 演出=丹野郁弓
2024年2月3日(土)~11日(日)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

https://www.gekidanmingei.co.jp/perfor.../2024_yasashiineko/