クルド人難民Mさんを支援する会 ブログ

日本で難民申請をしているクルド人の難民、Mさんを支援する会のブログです。支援の状況をタイムリーにお知らせします。 支援会本サイトはhttp://chechennews.org/msan/です。

映画「famíliaファミリア」を観てきました

 

話題の映画「famíliaファミリア」を観てきました。ポルトガル語で家族を意味します。
家族をテーマに、難民や移民、共感と排除など、現代社会を取り巻く様々な問題を描き出します。
役所広司さんが演じる朴訥とした壮年の焼き物職人が、息子がアルジェリアから連れてきた難民キャンプ出身の妻や、地域で暮らすブラジル人の若者たちと出会い、心境が変化していくところが見どころです。
観る人に強烈な問いかけをしてくる良い映画です。先の読めない展開に、目が離せなくなります。
日本で暮らすブラジル人の若者や、パキスタンと日本のミックスの若者が出演しており、演技をするのが初めてという方が多いのも注目です。強い個性のぶつかり合いが作品のリアリティを深めています。
 
「家族を幸せにしたい」
厳しい境遇にあるにもかかわらず、ブラジル人の若者たちは躊躇なく答えます。
衝撃的なシーンが多くありますが、それが単なる娯楽的な要素になっていないのは、作品の随所に日系ブラジル人たちが日本で置かている状況が語られているからです。
観る人は日本社会がブラジル人たちに課しているものを垣間見ることになります。
「3年働けば家が建つ」と言われジャパニーズドリームを夢見て日本に来たが待っていたのはそれとはほど遠い現実、リーマンショックにより大量に解雇されたこと、言葉を十分に習得できないために中卒にならざるを得ないこと、夢を描けないでいること。
そういった背景を知ることで、なぜ様々な事件が起きてしまうのか、これはブラジル人側の責任なのか、彼や彼女がそうならない為には、どうすれば良かったのか、観る人に強烈に問いを投げかけてきます。
 
ブラジル人を敵視する半グレ集団のリーダーは、トラブルをきっかけにブラジル人の若者たちに理不尽なルールを課し、守れなければ凄惨な暴力を加えていきます。
仲間や恋人を思う気持ちや、強制送還を恐れて警察の保護さえ受けられない状況によって、追い詰められていく若者たち。目を背けたくなるような暴力が彼らを襲います。
しかし、理不尽なルールと、守れなければペナルティを与え、切り捨てるというこの構造は、半グレ集団のみならず、日本が法律や制度という名で外国人労働者に課しているものであり、そこに何重もの搾取と差別を感じさせます。
夜明けの団地の屋上で、ブラジル人青年が恋人に悲痛な表情で語る「俺たち逃げられない」という言葉が、極めて印象的です。
ラストはまさに衝撃で、ああいった形で決着を付けるとは全くの想定外でした。
賛否両論あると思いますし、あの方法でいいのか、あれで本当に解決したのだろうかとも思います。
しかし、理不尽なルールで苦しむ目の前の人のために、ルールを壊しにいく姿には、私は共感せずにはいられませんでした。
 
ギタリストでUNHCRの親善大使も勤めているMIYAVIさんの存在が強烈です。
MIYAVIさんは半グレ集団のリーダーの役をしており、まさに普段の活動と真逆の立場で演じています。最初は引き受けるかどうか迷われたそうですが、排除をする側の気持ちを知る必要があると思い引き受けられたそうです。
様々な難民キャンプを訪れ、難民や移民の受け入れで摩擦が生じることを直視した上で、それを乗り越える道を探すMIYAVIさんの深い思いに感銘を受けました。
映画でもそれが示唆されており、排除する側の思いと、心を通わせる側の思いが描かれています。
映画「ファミリア」、素晴らしい作品です。ぜひ多くの方にご覧頂きたいです。
 
※PG12作品で暴力的なシーンが多く、性的なシーンもありますので、ご注意下さい。
映画「ファミリア」