1月30日に開催された下北沢の書店B&Bのオンライントークイベント、平野雄吾×鈴木江理子「日本の入管制度の問題に迫る」に参加しました。『ルポ 入管 ─絶望の外国人収容施設』(筑摩書房)刊行記念となっています。ゲストとしてクルド難民デニズさんも出演されました。
イベントには50人近くが参加。講演者への質問も多く寄せられ、オンラインながら活気溢れる会となりました。
著者である平野記者は共同通信のエルサレム支局から参加しました。
「入管―裁量に翻弄される外国人」と題して「ルポ入管」の内容をもとに、講演されました。
入管施設内部で起きていること、問題発生の根源としての「裁量行政」、在留特別許可に係わる問題、国際的な基準や国連の恣意的拘禁作業部会の勧告、改正入管法の行方などが話されました。
平野記者の、淡々と事例を紹介しながら問題の本質を浮き上がらせてゆく構成は大変素晴らしく、初めて入管問題に触れる人にもとても分かりやすいと思いました。
鈴木教授からは「移民・難民政策と在留特別許可~「線引き」をめぐるポリティクス~」
と題して、日本社会の外国人に対する政策の変遷を知ることができました。
図やグラフを多用して説明してくださり、時代によって、超過滞在の外国人への在留特別許可の出され方や退去強制による排除の度合いが変わっていることが分かりました。
就労資格のない外国人に対する日本社会の考え方も年代によって変化があり、1990年にはそういった人々の就労について「よくないがやむをえない」という意見が55%を占め、比較的優しいまなざしが注がれていたものの、2000年には40.4%、2004年には24.5%と、目に見えて減少していることが分かりました。
2009年7月に在特のガイドラインの変更がされ、以前であれば長く日本に居たことが救済の理由になっていたにもかかわらず、今はオーバーステイを長く続けたことが、残余の「不法性」として強調され、排除の理由にされてしまうとのことでした。
時代によってこんなにも在特の判断が変わってしまうというのは、基準などあってないようなものだと思いました。
驚くべき裁量権の広さだと思いました。当事者が納得できないのも無理はないと思いました。
特に印象的だったのがデニズさんのお話しでした。
入管収容施設の中で経験したことやご自身の思いを率直に語って下さいました。
冷静に話していたデニズさんが、収容中の辛い経験を思い出したのか、堪えきれず、涙を流しながら話す場面もありました。
「生きるために日本に来たのに、日本に来てずっと死ぬことを考えている」というデニズさんの言葉。保護を求めた難民を心身ともに苦しめて絶望させ、追い返そうとしているこの現実。日本の難民問題を象徴する言葉だと感じました。
参加者に対して強い問い掛けがされたと感じました。
質疑応答にはたくさんの質問が寄せられ、講演者の方々が真摯にかつ知見をもって答えて下さいました。
イベントの最後にデニズさんが「未来は良い方に人間のおかげで変わります。悪い方にも人間のせいで変わります。良い方向に変わっていって欲しいと思います。入管のルールを変えて欲しいと思います」と静かに語ってくれました。
今まで知られてこなかった入管問題を、多くのエピソードを交えながら問題点を解説する「ルポ入管」。非常に画期的な一冊で、マニアックになりがちな入管問題を幅広く広めていく上で大きな力になっていると感じます。
実際、この本を読んだ若い方々が、ドキュメンタリーを作ってくれたり、展覧会やブックフェアを企画してくださるなど、行動を始めて下さっています。
支援者として、今まで支援活動に足りなかったものをこの本が埋めてくれたと感じています。
とても良いイベントだったと思いました。
非常に厳しい状況が続きますが、希望を感じたひと時でした。
今後も微力ではありますが、こうした方々とつながりながら、支援活動を頑張ろうと思いました。