堀潤さん監督、きたむらけんじさん脚本の映画「わたしは分断を許さない」を、公開初日の3/7にポレポレ東中野で観てきました!堀さんの舞台挨拶と岩井俊二監督との対談映像上映がある20時の回に行きました。
コロナの影響で岩井監督との対談は急遽映像上映に変更になったそうです。集客にも影響があるだろうかと心配しましたが、そんな不安を吹き飛ばすかのように続々とお客様が集まり、会場はあっという間に満席になりました。
感想を書きましたので、よろしければご覧ください。ぜひ多くの人にご覧頂きたい作品です。
今の社会に漠然とした不安を感じている方も、この作品を見ればなんとなく温かな気持ちになると思います!
映画はとても素晴らしい内容でした。
香港のデモから始まり、原発、日本の入管、難民、カンボジアの中国企業の進出、ジャーナリストへのバッシング、シリア、米軍基地、パレスチナ・ガザ、北朝鮮、ヨルダンのシリア難民のキャンプなど日本や世界で起きている様々な問題。堀さんのナレーションとともに次々と映し出されていきます。
一見ばらばらに見えるテーマですが、出てくる一人一人のストーリーに触れることで、それぞれの方々が何を失っているのか、何に苦しんでいるのかを知ることができます。
スクリーンに映る人達はどの人も会ったことが無い人ばかりなのに、観ているうちにどうすればこの人たちを苦しみから助けることができるのだろう、と真剣に考えている自分がいます。
強い共感を呼び起こすのは、その人達が求めているものが地域の人達とのつながりや、安心して子育てできる環境、安心して生きられる場所など、自分がその状況にあったら、当然それを必要とするだろうというものばかりだからです。
映画のラストに、福島の原発事故によって生業を奪われてしまった人達が、前に一歩づつ進んでいく姿が紹介されていました。
「原発事故の不安も、米軍基地の問題も、何でも普通に話せる世の中になって欲しい。
何か発言すると、左とか、そういう風に決めつけるのではなく、思ったことを普通に話せるようにして欲しい。TVが言っているからとかではなく、自分で考えて話して欲しい」と語る、放射能から子どもを守るために沖縄に避難した女性。
「原発が事故を起こすとこういうことになってしまうんですよ、とやっぱり誰かが伝えないとダメだと思った。被災者も黙っていてはいけないと思った」と言い講演会で話すことを始めた原発事故で故郷を失った元美容師の女性。
上映後の舞台挨拶で最後に堀さんが仰った言葉が非常に印象的でした。
「既に三作目の取材に入っています。スーダンに行ってきました。
民主主義が無くなるかもしれないという未来を僕は危惧しています。
最初に作った映画は忘却がテーマでした。2年目でもみんな忘れちゃうんだなと思い震災をテーマにしました。
忘れた先に何があるか、知りもしない、知る機会もない、知らされもしない、
そうした中で分断が起きたんだなと思いました。
分断が進んでいった先には恐らくもう疲れ切っているから誰かに決めて欲しい、良くしてくれるなら誰でもいい。
恐らくもう何も決められない社会に到達するんじゃないかなと思っています。
そうなる前に皆さんと一緒に声を上げていきたいです。」
これから日本社会がどうなっていくかをとても良く示唆していると感じました。
映画を見終わって感じることは、堀さんやきたむらさんの温かな眼差しです。、
ジャーナリズムの役割は権力の監視であると言われています。
世の中で起きていることを知らせ、人々に警鐘を鳴らす。
堅く書くとこうですが、この映画はなぜ知ることが必要なのか、知らなければ何が私たちに起きるのかを丁寧に優しく伝えてくれているのです。
ぜひ多くの人にご覧頂きたいと思いました。今の社会に漠然とした不安を抱えている方も、この映画を観れば、映画館を出るときにはなんとなく心が温かくなっているのではと思いました。